作品の輝きを未来へ
修理・修復には「現状維持」という基本方針があります。
これは作品の持つ芸術的・歴史的価値を損なうことなく、鑑賞性を回復し、長期にわたり維持できる状態とすることを意味します。
失った部分の書き起こしや、塗り足しなどを行って元の姿に戻すことを目指すのではなく、作品の現状、長い時間を経て得られた紙の色合いや風合いも尊重し、損傷の原因を取り除く修復を行います。
作品の真の輝きを失わせずに未来へとつなぐことが、私たちの責務だと考えています。
文化財の修復とは、単に古くなったものを新しくする営みではありません。
そこに刻まれた歴史や、先人たちの祈り・思いを尊重し、未来へと受け渡すための営みです。
私は長年、文化財修復の現場で数多くの作品と向き合ってまいりました。
作品は一つとして同じものはなく、それぞれが声なき声を発しています。
その声に耳を澄まし、必要な手を加え、次の世代に託す。
それが私たち修復者に課せられた責任であり、使命だと考えています。
これからも、伝統的な技術と素材を大切にしながら、最新の知見を取り入れ、文化財と誠実に向き合い続けてまいります。
文化財修復とは、人の病に例えると入院治療や手術であり、修復技術者は医者のようなものです。
長年の貴重な文化財の修復経験で培った確かな技術で、安全な修復を提供しております。
所蔵者様の修復のご依頼に際し、文化財・美術品を後世に護り伝えることを第一に考え、所蔵者様のご要望に合わせ、その方策を柔軟にご提案いたします。
恒春堂のしごとをご紹介します。それぞれクリックしてご覧ください。
表装を完全に解体し、本紙(書かれた素材、作品そのもの)と共に劣化した裏打ち紙を取り外し、本紙に適切な修理を行います。作品をベストコンディションに整え、約百年後の再修復までの保存状態を安定させます。